デザイナーの視点から開発にまつわる窯の探訪記と一緒にうつわをお届けします。

デザイナーの視点から開発にまつわる窯の探訪記と一緒にうつわをお届けします。

『旅するうつわ』とは

ケユカはブランドが始まってから変わらず、産地に足を運び、産地の方のお話を大切に聞いて、ものづくりを進めてきました。

『旅するうつわ』とは、全国各地の産地・窯元を訪ねて、その土地でしか出会えないうつわをみなさんへお届けしたいという思いをもとに始まり、デザイナーが産地や窯元を訪れて感じたことを「窯元探訪記」としてお届けしています。

うつわのかたちが生まれた背景である産地の歴史や、窯元の皆さんが毎日守ってきたものづくりのこだわりをデザイナー目線で皆さんにお届けします。

第7回 旅の目的地は愛知県瀬戸市

どんな料理も受け止めてくれる安心感
瀬戸焼 筆絵シリーズ

デザイナーTが瀬戸の古作「馬の目皿」に出会ったことをきっかけに、この企画が始まりました。どんな食材も受け止めてくれそうな懐の深さ、そして力強い文様がとても魅力的に感じました。初めて出会ったときに感じたときめきそのままに、ケユカのお客様に届けたいと思いました。

食卓の真ん中が似合う、瀬戸のお皿

馬の目文の存在感を活かして、食卓の真ん中が似合う大皿を作りました。
7寸皿(21cm ブルー)は1~2人前、8寸皿(24cm ブラウン)は2~3人前のメイン料理の盛り付けにちょうど良い大きさです。重さが気にならないよう、指がしっかりひっかかって持ちやすいリム(お皿のフチ)付きの形状にしました。

大皿
-軽快な絵付けが気持ちいい、丸金製陶-

馬の目皿の生地には瀬戸で採掘される蛙目(がいろめ)という白い土が使われています。職人さんの手によってリズムよく文様が描かれていきます。文様の色には、錆色と呉須を選びました。呉須は、錆色を帯びた色を筆絵シリーズのために作っていただきました。白土と深い色が秋の食材の熟した色味を引き立てます。

とんすい
-パッと目を引く色使い、磁光園製陶所-

大皿からおかずをよそう「とんすい」。とんすいの絵付けは、太い線をさっと巻いた青巻きと、呉須と琥珀色が華やかな二彩の2種類を描いていただきました。渋い呉須と、明るい琥珀色のコントラストが食卓の中でパッと目を引きます。

瀬戸で、
馬の目皿が生まれた背景を知る

※瀬戸蔵ミュージアムにて撮影
馬の目皿が作られた背景を知るため、愛知県瀬戸市、瀬戸蔵ミュージアムを訪問しました。当時の道具や窯の様子、地域窯業の歴史など様々な角度からお話を伺うことができました。

うつわづくりを支える、
瀬戸の豊かな自然資源

※瀬戸蔵ミュージアムにて撮影
瀬戸では、やきものに欠かせない良質な粘土、窯を焚くのに不可欠な木材、そして釉薬を採掘することができました。全国でも珍しく呉須(染付け磁器の模様を描く顔料)の原料である鉱物コバルトを川底の砂から採取することも可能でした。こうした豊富な資源を背景に、平安時代中期から現代までやきものづくりが盛んに行われています。

大都市を支える陶磁器産地として
発展してきた瀬戸

※瀬戸蔵ミュージアムにて撮影
馬の目皿が作られた江戸時代後期、当時の瀬戸を知るために外せないのが大都市との関係です。せとものは尾張藩の流通システムにのって、江戸や大坂を中心に全国へと売られていきました。大需要に応えるため、効率よく生産するための工夫の跡が当時の窯や品物に残っています。
馬の目皿は、一尺(30cm)を超える大きさから、宿場の旅籠や料理屋のうつわとして使われたと考えるのがしっくり来ます。賑わう江戸の町で旅の人々をもてなしたのでしょうか。

背景から見えてきた、馬の目文様の謎

※瀬戸蔵ミュージアムにて撮影
なぜ馬の目文様が生まれたのか、はっきりとした答えはありませんが、大都市の需要に応えた背景から、素早く一色で描ける文様が生まれた理由を推し量ることができます。そして、その中で偶然生まれた馬の目文様が都市の人々の心を掴み、買い求める人がたくさんいて、産地はそれに応えるようにたくさんのうつわを作ったのだろうと思います。

デザイナーの訪問後記

馬の目皿が作られ、愛された背景を知り、瀬戸の人々の歩みそのものに触れた思いがしました。改めて、これからも産地の魅力と共に、日々の相棒となってくれるようなうつわを届けていければと思います。写真はお昼に立ち寄ったお蕎麦屋さんで使われていた馬の目皿と、丸金製陶の看板犬コタロウちゃんです。

次回の旅先は…

次の旅は、岐阜県美濃市、美濃焼のうつわをお届けする予定です。
ぜひ、楽しみにお待ちいただければと思います。